200年続く会社を目指す。元塗装職人㈱Matsudairaの松平社長が大切にしている思いとは
written by 大場春香
2000年創業。兵庫県三木市で屋根&外壁塗装をしている株式会社Matsudaira様(プロタイムズ三木店)。今回は、松平社長に取材。10代の頃に職人として塗装業に携わり35年。法人化に伴い、未経験として営業へのジョブチェンジもご経験されています。
職人を経験していたからこそ分かる思いがある。
海外の塗装や下請け時代のエピソードなども踏まえてお話をお伺いしました。
インタビュイー:松平 百史さん
兵庫県神戸市出身。10代の頃から塗装職人として塗装業に携わる。
イタリア、オーストラリアでの塗装経験を活かし、個人事業主を経て、株式会社Matsudairaを設立。
趣味はサッカー観戦、旅行。大好きな映画「ゴットファーザー」の視聴回数は500回を超える。
インタビュアー:大場 春香
キャッチコピーは「人生は、自分が幸せになるための宝探し。人に寄り添う言葉の紡ぎ屋。」
インビジョンの鼓舞屋(カスタマーサクセス)。国家資格キャリアコンサルタント保持者。
海外に行って気付いた、塗装の魅力
ーー松平社長はお父様の影響で、幼少期から塗装職人をされていたんですよね。その頃のお話をお伺いしてもいいですか?
恥ずかしい話なんですけど、あまりお父さんの仕事が好きじゃなかったんですよ。破天荒な人で「仕事したくないんだったら勉強しいや」って、ずっと言われてましたね。
でも実際は、中学1年の後半で学校をリタイアしています。「学校行けへんのやったら働きや」って言われて父親の手伝いをしてたんですけど、1か月仕事したら2週間休んでどっか遊びに行ったりとか、好き勝手してました。ちょっと親と離れた時期にアパレル業界で仕事もしていて、それが海外に行くきっかけになったんです。1つの靴や服を作るのに、生地1枚から何十人もの人が何工程にも分けて作るヒストリーがいいなって思って、本場のイタリアに行ったんですよね。
それから、イタリアのシチリア島はいろんな映画の舞台になっているので、映像美の生の世界に行ってみたいというのも動機のひとつでした。
ただイタリアで働くには、ペルメッソという滞在許可証が必要なんです。そもそも就労ビザがないし、イタリア語の学校にも通っていたんですけど、言葉が通じないところではなかなか仕事がなかったですね。意外とコネ社会だったので、友人の紹介で壁の塗装職人として働いていました。
でも当時は処遇も悪いし、差別もありましたね。途中で持っていたお金がなくなってきたんですよ。そこでオーストラリアに友達がいるのを思い出して行ってみたんです。
オーストラリアでは飲食店で働いたりもしたんですけど、1週間の家賃が払えるか払えないかくらいで、ご飯も食べれない。結局塗装をしていましたが、そのときもまだ全然ペンキ屋さんなんか好きでも何でもなかったですね。帰りたくないなと思ったら本気で働かなきゃいけないっていう状況で、一番僕の中で染みついてる仕事が塗装屋だった、という感じです。
ーーお金がない状況でも日本に帰らなかった理由があるんですか?
日本の良さが全然分かっていなかったですね。
その時僕離婚もしたので、開放的になっていたのかもしれません…なんでしょう、解き放たれたみたいな。
結局、イタリアに1年くらい、オーストラリアのメルボルンには8か月くらいいました。
ーー2年弱くらい海外に滞在して、海外と日本の施工の違いや魅力も感じられたんですか?
ありましたね。オーストラリアはすごく大雑把でした(笑)日本の施工はすごく細かいので「そこまではしなくていいよ」って言われるんですけど、やっぱり親方は信用してくれましたね。
それから日本は建設業の地位が高い。いろいろな資格で守られているので、日本ってしっかりしているなって思いました。
海外にいればいるほど、日本の良さが分かったような気がします。
喜びも苦しみもダイレクト。法人化を決意した理由
ーー海外に行かれる前と後では、どのような気持ちの変化があったんですか?
自分で覚えてきた塗装で、海外でも飯食っていけるんだって思った瞬間に、塗装工事っていいなって思ったんです。塗装屋としてはサラブレッドなんでね(笑)海外での経験を経て、確信を持てたという感じです。
帰国後は個人事業主として塗装職人をやっていましたが、下請けだったので常にモヤモヤはありました。
僕らの上には中間業者が1、2社いて、そこでマージンとられるんですが、末端は工事品質を守らないとだめなんでね。結構しんどいなって。
中間業者の人はお客様と触れ合わないんですよ。僕らが1番お客様と近いので。そんな中でお客様から直接お褒めの言葉を頂いたり、喜んでもらったりとかすると関係ないところまで色を塗っていきますよね。やっぱり気持ちなんだなって。
ところが下請けの場合、追加料金が発生するので、どんなに良くしていただいても勝手に作業ができないんです。だから、自分たちでやれたらなって。喜びも苦しみもダイレクトにくるんでね。
ーーそんな中で法人化も決意されたわけですよね。
はい。最初はあまりしっくりこなかったんですけど、このままだと新しい仲間が来てくれないと思ったことが法人化のきっかけですかね。入社してほしいと思った方から、福利厚生についての質問をいただくことがあったので、1つひとつ整備していきました。
どんどん従業員が増えていくと、家族が増えていくような、やっぱり背負うものが違いましたね。
職人から未経験で営業へのジョブチェンジ
ーー営業へのジョブチェンジもされたんですよね。未経験でもここまでやってこれた理由ってあるんですか?
僕、多分喋られないわけではないと思うんですよね。だから、重衣料や靴も売っていたわけで…その業界を塗装にシフトチェンジしただけなのかなって思います。
それから、職人って自分がやる仕事が一番だと思っているんでね。その思いをお客様に伝えることが営業でも大事なんじゃないですかね。多分、思いがあると簡単に売れると思うんです。
だから今は、職人から営業にあげたいっていう思いが結構強いですね。
ーーそんな中でも社長になってから失敗したことや悩んだりしたことはあったんですか?
常に悩みの上書きといいますか、悩みしかないですね。
例えば、採用や今いる従業員たちとのコミュニケーションも悩みのひとつです。だって家族より一緒にいるわけですから。
同じ目標や目的に向かってますけど、やっぱりいろいろありますよね。相手が誰であってもやっぱり人と人なんで、悩んでないときはないと思います。
でも、なるべく毎日楽しく仕事しようっていう気持ちは大切にしています。僕が楽しいとやっぱり周りに伝染していくからね。だから、今日機嫌悪いなっていうときは、僕いない方がいいんですよ(笑)
ーー社長が「楽しい」って思うときってどんなときなんですか?
現場を見に行って、職人さんと触れ合ったり、お客様と直接話してる時が一番楽しいですね。
丁度昨日、職人やお客様とお話する機会があったんですよ。特に職人は自社雇用ではないので、5分くらい喋っただけでも「こう思ってたのか」とか「こうしてあげた方がいいのか」とか気付きましたね。
あとはお客様が喜んでいたことを伝えてあげると、彼らもすごく喜んでくれるので、喜びもリンクしていきますよね。僕らで止めると僕ら止まりなんですけど、それをしっかり従業員にも、外注の職人さんにも伝えるようにしています。
お客様にご感想シートを書いてもらったりするので、職人さんのご家族宛に郵送してもいいかなとかも考えたりするんですよね。そうしたら「うちのお父さん、なんかすごくいい仕事してるね!」ってご家族も喜んでくれると思うんです。
徳川幕府のような200年続く会社を目指す
ーー今後はどのような会社を目指していきたいですか?
やっぱり地域で一番になることですかね。大体年間150件ほどのご自宅を見に行くわけじゃないですか。そうすると残念なことに、前回の塗装工事がいかに劣悪かが分かるんですよ。だけど、うちは凄くいい工事をしているっていう自負はあるんです。株式会社Matsudairaの塗装は間違いないって言ってもらえることが、目先の一番の目標ですね。
あとは、徳川幕府のように200年続く会社も目指しています。200年後にどの方が社長をされているか分からないですけど、家がある以上は需要もあると思うので、歴史のあるしっかりとした塗装工事業者として会社を大きくしていきたいです。
ーー200年後も変わらず大切にしたいことはありますか?
この仕事がなかったら、僕って何者にもなっていないから、家族も守れてなかったと思うんです。破天荒なお父さんだったけど、この仕事をもらったおかげで今の幸せがあるんでね。結局のところ、僕たちの未来を明るくしてくれたのかなって思います。
だから僕らも200年後の子どもたちの未来を明るくしたい。塗装工事業って学歴不問でも挑戦できる仕事だと思うので。
僕もやり直せるなら高校や大学に行きたいですよ。だけど学んでいない僕でも、こうやって一応はやれているんですから。だから、200年後もこの仕事はずっとあり続けてほしいし、子どもたちの未来を明るくするような会社を大切にしたいですね。
そのためには、品質の良い工事をお客様に提供できるように、改めていろいろと整えていかなきゃいけないなって思います。それから、僕たちと同じ思いの仲間を増やすことですね。この思いが違うと多分1年ぐらいで辞めちゃうと思うんですよ。苦しいときこそ、思いが大切になるので。
最近事務の方から、「人の人生にこんなに携われる仕事って今までなかったんで、普段から良い仕事をさせてもらってます。社長ありがとうございます」って言われたんです。その時はすごく嬉しかったですね。
お客様にご指摘いただくこともありますが、最終的に「ありがとう」と言ってもらったときに、その思いが出るんでしょうね。その思いを知っているから、つらくても苦しくても頑張れる部分ってありますよね。
ーー思いを大切にしながら200年続く会社にするためには、どんな仲間と一緒に仕事をしていきたいですか?
火傷するくらい、熱い方に来てほしいですね。
人間って言葉で伝えていく動物ですけど、同時に熱量も大事だと思うんです。
営業は仕事柄、オーバートークになってしまうこともあるけど、お客様ってちゃんと見ているんで。それでも、きちんと熱く伝えれば信用してもらえるんですよ。
まぁ何人かは冷静な人も必要ですが…やっぱり陰日向がない人と出会いたいですよね。
あとは数字も大事だけど、売れればいいってもんでもないと思うんです。僕らだったらお客様には嘘をつかず、やれることしかやれるって言わないんで。逆にやるって言わなかったとしても、やれることは最後までやりますよ。やっぱりいつまでも片足が職人なのかな。
営業は数字が大事だし、売れないと会社が潰れてしまうのも当然ですが、価値観も大切にしたいですね。塗装業って製造業じゃないんで、スキルよりも最低限の人間力がいるんじゃないかな。
思いが同じ仲間をたくさん増やして、いい会社を作っていきたいなって思います。やっぱり人なんでね。
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取材後記
2023年7月。
営業担当からLINEが共有されました。
送り手は今回インタビューをさせていただいた松平社長。
その内容は、わたしがヒアリングをして作成した原稿で、ペルソナに合った方からの応募が入ったというものでした。
求人原稿を作成しても、採用できたら原稿を非公開にする、というのが通常なので、松平社長から直々に感謝の言葉をいただいたのがわたしにとって始めての体験でした。
実はその頃丁度、仕事でミスをして落ち込んでいたのですごく救われたんですよね…
まさに喜びのリンクだな、と思ったエピソードです。
㈱Matsudairaのホームページ:https://protimes-miki.com/